CardWirthシナリオ感想リストその13 | ごろん小路。

CardWirthシナリオ感想リストその13

名作フリーゲーム「CardWirth(カードワース)」のシナリオの情報をまとめたものになります。

主に、実際にプレイしたシナリオに対する個人的な感想になります。

今回は『永遠なる花盗人』・『征けよ旅人、口笛と共に』・『聖ゼニムと王国の種』です。

注意点として、ここにある情報は筆者の個人的な感想や価値観に基づくものであり、客観的・情報的に正しいかは保証できません。

また、すべてのCardWirthシナリオやその作者様・素材制作者様を侮辱・批判するものでもありません。

最低限の情報のみを掲載していますので、シナリオの配布元や現在入手可能かどうかの確認は各自の責任でお願い致します。

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CardWirthシナリオ感想


■『永遠なる花盗人』 mahipipa様 対象レベル:6~8


張り紙から抜粋【そこは秘密の花園だった ありとあらゆる花が敷かれた 極彩色の煉獄だった】


今回の依頼は賢者の塔から脱走した「ホムンクルス」の討伐である。

冒険者たちは討伐対象のホムンクルスを追って、彼女が逃げ込んだと思わしき廃教会を訪れていた。

事前の情報によれば、件のホムンクルスは精神に干渉する力を有しており、すでに被害者が多数出ているとのこと。

連続変死事件の原因として断定されている。

何でも、ホムンクルス――アタナシウスは、精神の一部を具象化して奪うことができるのだという。

被害者は皆、遅かれ早かれ発狂して死亡していることから、「精神の一部を具象化して奪う」ことによる作用だと予測できる。

そして、冒険者たちはアタナシウスを発見し、討伐しようとしたが仲間の一人が不意打ちを受けて「花」のようなものを奪われてしまう。

直後、「花」を奪われた仲間が昏倒してしまうのだった……。


生物の精神に干渉する力をもつホムンクルスを討伐する戦闘シナリオ。

上記にあるように、アタナシウスによる奇襲を受けて冒険者が被害を受けてしまうところから物語が始まる。

作中でも語られるが、アタナシウスは一般的な人間の精神性とは異なる心の構造をもつ存在。

言語による意思疎通はとりあえず可能だが、根本的なところで噛み合うことはない。

つまり、冒険者たちよりも以前に討伐に赴き、しかし失敗して人体実験に使われた魔術師――「ロバート・ライリー」によれば、以下の通りである。

かつて賢者の塔でアタナシウスが飼育されていた際に、彼女は管理者を殺害したうえで死体を持ち去っている。

当初は管理者がアタナシウスを連れ出したと思われていたが、後日、軒先に管理者の首吊死体が発見されている。

偽装工作をする知性はあるのに、その後に大げさに死体を見つけさせるなど、アタナシウスにとっては意味があることなのだろうが、その精神構造が人間とはかけ離れていることを思わせる行動である。

また、「花」を奪われた仲間は精神的にアタナシウスと繋がっているような形になっている。

そこから冒険者は、アタナシウスが奪った精神の一部である「花」を歪めた形で戻そうとしていることに気がつく。

アタナシウスは人間の数の力を知ったことで集団を求めており、自分の群れを求めているのだった。

完全に群れの一員に加えられる前に、「花」を正常な形で取り戻す必要がある。

冒険者たちは、アタナシウスが待つ北西の廃墟にある庭園へと向かうのだった……。


総括すると、人の心を独自に理解・生存しようとした怪物と相対するシナリオ。

作中でも述べられている通り、アタナシウスの「花」による群れの製造は同化と蹂躙。

一般的な人間の精神性とはかけ離れているため、人間社会とは噛み合わない。

実際、賢者の塔の管理者を自身の計画のための撒き餌として殺害している。

また、脱走後も人体実験を繰り返しており、追撃してきた冒険者たちに対しても失敗したから次を探すだけという旨の発言をしている。

最終的に、アタナシウスは冒険者たちに討ち取られるが、これを暴走したホムンクルスの末路と見るか、ただ生きるために足掻いた命であると見るかはプレイヤー次第だろう。



■『征けよ旅人、口笛と共に』 mahipipa様 対象レベル:5~7


張り紙から抜粋【行けよ行けよや、冒険者。しかばね、まぼろし、振り向かず。征けよ征けよや、冒険者。「ただいま」までが遠征だ。】


辺境の村での妖魔退治からの帰り道。

冒険者たちを乗せた乗合馬車は、順調に彼らの拠点である冒険者の宿へと向かっていた。

今回こなした依頼は珪砂と石灰が豊富な土地のものであり、古くよりガラス細工が有名な村だった。

冒険者の一人はお土産にガラス細工のペンダントを購入していた……ちょっと安めのものを。

そんな話をしていると、御者が口笛を吹いていた。

何でも、このあたりでは「口笛は魔を退けるもの」として信仰されているらしい。

実際、自警団やこのあたりを出身とする冒険者には口笛が上手いものが多い。

また、馬車の荷には大柄のガラスの箱が積まれており、もっと大きな町で展示するために移動中なのだとか。

……そのガラス箱の周囲に砂らしきものが落ちていたが、ガラス細工そのものには傷はなかった。

そして、一面の草原へ馬車が出たその時、そこには美しい女性が立っていた……。


囚われた仲間を救出し脱出するダンジョン探索シナリオ。

冒険者の一人はいつの間にか見知らぬ場所に倒れており、行方不明になった仲間を探すことになる。

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どこもかしこもガラスばかりの異様な空間を探索する冒険者。

その途中、耳に葉を模した飾りをつけた赤髪の青年「ラーヴル」と出会う。

ラーヴルに話を聞いてみたが、彼は今冒険者がいる場所のことはもちろん、自分自身のこともよくわかっていない有り様だった。

ただ「口笛が魔除けになる」という情報だけを覚えていた。

そしてラーヴルによれば、人間が丸ごと収められるような大きなガラスに、人が閉じ込められるところを見たという。

また、興味深いことに、道中の通路を作り出す仕掛けは冒険者には動かせず、ラーヴルにだけ反応を示した。

冒険者はしばらくの間、彼を利用した方が良いと判断。

ラーヴルとともに仲間の奪還を目指して歩き始めるのだった……。


総括すると、自分の帰るべき場所へ戻るため、守るために戦う人たちのシナリオ。

かつて硝子の魔神に勝てなかった人々も、その遺志は現代へと残り一つの形をなしていた。

そして、それを冒険者たちが引き継ぐことで未来への突破口を開いてみせた。

また、雑談なども含めて冒険者たちがかなり喋るシナリオでもある。

冒頭の設定などが反映されているので、ぜひとも会話を楽しんでみて欲しい。

最後は、これからラーヴルと一緒に世界を冒険していきたいものである。



■『聖ゼニムと王国の種』 mahipipa様 対象レベル:5~7


張り紙から抜粋【かくして聖女様の魂は、千里を羽ばたく鳩となったのです。】


交易都市リューンより北、ラーデックの山岳地帯を超えた先に「古都ダレット」がある。

今回、そのダレットからの依頼が冒険者の宿へと届いた。

内容は「異端者残党の調査及び討伐」である。

今から一ヶ月ほど前、ダレットに異端者の集団が現れた。

この異端者たちはすぐに御堂騎士に討たれたのだが、行方不明になった者が出ているのだという。

依頼人――古都ダレットから遣わされた女性「イシェト」はそう説明した。

イシェトは領主の娘であり、双子の兄が先の掃討戦で行方不明になっている。

単純に異端者の集団の規模が大きかったこと、行方不明者が出ていることから冒険者に残党の討伐依頼が出されたのであった。

そして、古都ダレットに到着した冒険者が見たものとは……。


古都ダレットで発生した異端者騒ぎの解決に奔走するシナリオ。

古都ダレットや遺跡を調査して異端者たちの足跡を追っていく。

その過程で様々なことが判明し、古都ダレットが異常な状態に置かれていることが顕になる。

街にある落書きが消したはずなのに元に戻っていたり、別の文章に置き換わっていたり。

人力では不可能だそうなので、明らかな異常だと言える。

このように街での聞き込みでも不穏な噂が絶えない――陰謀だ!

また、異端者騒ぎの現場である「ギメル遺跡」では動死体(リビングデッド)となった御堂騎士に襲撃を受ける。

撃退したものの、倒した・滅ぼしたという手応えではなかった。

さらに後日、街にさらなる異変が発生したのだった……。


総括すると、様々な想いが交差する儚く美しいシナリオ。

物語冒頭からどこか不穏さを感じる話が展開され、美しいBGMがそれを強調する。

また、街中の様子からもわかるように事態はすでに手遅れの状態となった後となっている。

最初の依頼内容からは単純な調査依頼かと思われるところを、徐々に複雑化していく事態が物語に深みを与えていく。

ちなみに、街の聞き取り調査で登場する陰謀論者はこの作品が初登場なのかな。

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